無欲の釣り
ぷぷっ!
と吹き出しそうなニュースを目にしました。
阪神がまた勝っちゃった・・・じゃなくて。
2才の女の子がね、大人達の魚釣りについて行きました。(と言っても本人の意志じゃないと思うけど)
大人達は魚を釣るのが好きなんでしょうね。
「あたちもやりたーいーの^-! おちゃかな、つーりーたーいーのー!」
的な駄々をこねたことは容易に想像できます。
だって、何度か行っていたとするならば、その子ツリを眺めていることはヒマで閑で仕方なかったと思いますから。
どうやら大人達は釣り竿を与えたようです。
間違いなくおもちゃの。
だってバービーちゃんの釣り竿だもの。
大人用が売っていたらそれはそれでおかしな話だから。
でね、みんなが釣りを始めて。
女の子も、プラスティックで出来たおもちゃの釣り竿を使って糸を垂らしていたんだと。
映像を見る限り、多分湖系だと思われます。
つまり、疑似餌で釣るやつ。
ルアー。
だから気持ち悪い虫をぐねぐねっと針に付けなくてもイイ。
そのまま垂らしていればいい。
で、わいわい大人達が釣りに興じていたら、
アラ驚いた!
バービーちゃんの釣り竿にものすごいアタリが!
大人たち、まさに オウマイガッ! と叫び声を上げてバービーちゃんの釣り竿を引き上げた。
可愛らしいピンクのリールをきりきりきりって。
そうしたらば。
めっちゃ大きなプチナマズ釣れていたんだと。
どのくらい大きいかというと、ノースカロライナ州記録となる大物。
32インチ、9kgって。
すごいわねー。
何これ?
無欲の勝利と言えば言えなくもないかと。
自然とかを相手にして欲をかいちゃいけないんだよねー・・
以前ここにも書きましたが、お化け屋敷で一緒に暮らしていたり交通事故の処理を一緒にやった S 君(過去の文章参照ってことで)こと泥舟船長が、
「ねーねー、妹尾さん。 小さい頃ね、自転車で多摩川に行ったの。 でね、みんなが釣りしてて。 ぼくは釣りとか興味ないから横で石を投げて遊んでいたの。」
「ほうほう・・んで?」
「だんだんね、大きな石を投げる遊びに変わっていって・・・」
「うんうん、それは子供としてはよくありがちだわな。」
「でね、もう両手をいっぱいに広げなきゃ持てないほど大きな石を持ち上げたの。 すごい重いやつ。でね、もう重すぎて投げるとかそんなんじゃなくて、ほぼ落とす感じ。 ドボンって。」
「わかるわかる。 まあ持ち歩く限界の大きさってことね。」
「それをね、おりゃあああっ! て川に投げたら、ぼこぼこぼこって沈んでいって。」
「うん。」
「しばらくしたら、こつーん・・・みたいな音がしたの。 あ、投げた石が底に落ちていって、別の石とぶつかったんだなーって。」
「はいはい。」
「でね、またまたしばらくしたら、ものすごいでっかい鯉がプカーって浮いてきたの。」
「・・・・・・・・」
「超音波攻撃? なんか魚がびっくりして気絶したみたい。」
「・・・・・・・・・」
「それをね、自転車の前のかごに入れて持って帰った! お父さんがとっても驚いて。 鯉こくにして食べたんだよ!」
「・・・・むむぅ・・」
という実話があります。
彼の名誉のために書いておきますが、そんな意味の分からない妄想をしゃべる男ではありません。
そして、お父さんもめっちゃ立派なお方。
本当話です。
これも無欲の勝利でしょうね。
その泥舟船長こと S君 と、熱海の海に釣りに出かけたことがあります。
釣りといっても、それは名目だけで、単に海とかで遊びたかっただけで。
大人になってからですが、もう20年くらい前。
基本的に釣りに適していない(落ち着き感ゼロ)の二人ですので、そのときもまたあっという間に飽きてしまいました。
船からの落とし釣りだったのですが、船頭さんがびっくりするようなアラという魚が釣れました。
多分、オーバーじゃなく6~70cm以上あったような記憶。(S、違ってたら言って!)
「年間に数本しか上がらない! 大きいし型が良いので陸に上がったら魚拓をとらせてよ!」
「ふーん、そーなんだー・・・ぜんぜんいいっすよー。 ってか酔ってきた。 もう船イヤだ。」
みたいに、価値の分からん二人にしてみればどうでも良い感じになってきて。
で、陸に上がりますと、海辺にテトラポットが積み上げてあります。
格好の遊び場!
波も良い感じにざぶんざぶん来るし。
きゃーきゃー言いながら半濡れで遊んでおりました。
そうしたらば先ほどの船長が、
「魚拓有難うね! この魚はとっても美味しいからちゃんと持って帰って食べなよ! ねえ、1日乗る約束でお金もらってるんだけど、本当に午前中で降りちゃって良いの?」
「いいです。酔うし。」
「じゃーね、このテトラポットのところで釣ってごらん、カサゴがいっぱい捕れるよ。 竿貸してあげる。」
「はいどーもー・・・」
で、釣り始めてみたら本当にアホほど釣れる。
私たちみたいな人間でも簡単に釣れる。
今ならカサゴとか大好きだし、大喜びだったでしょうが、当時は完全にお肉派。
「こんな赤くて背びれが痛い、金魚の化け物みたいなのいらんわ!」
って、カサゴ釣りもそこそこで止めてしまいまして。
結局何をし始めたかと言いますと、
<竿のオモリどこまで飛ばせるか競争!>
・・・
書いていて情けなくなるほど頭が悪い。
S君 と二人でキャイキャイ叫びながら竿を振り始めました。
「おおおおお、あんなところまで飛んだ! 俺のが一番遠いいいいいっ!」
「ちーがーうー、ボクのがもっと飛んでるうううっ!」
「おーれー!」
「ぼーくー!」
・・・
(だめ、もう書けないほど恥ずかしい。)
で、勝負がつかないで、競技ルールが若干変更されることになりまして。
<このオモリをどこまで海中深く沈み込めるか競争>
二人で、テトラポットの上に仁王立ちになり、大声で奇声を発しながら竿を真下に振り下ろす。
海水かぶってびしょびしょになる度に笑ってるし。
いいんです、アホウだから。
ま、何とも形容しがたいモノがありますな。
この競技を何度かやっているウチにどちらの竿だか忘れてしまいましたが、糸が引っかかったみたいになって上がってきません。
オモリも一緒に引っかかってる感じ。
「ええーーー、糸切れちゃったらもう遊べないじゃん! 何やってんだよー。」
二人で一生懸命、糸を切らないようにリールを巻き上げます。
すると、ズルズルした重い感触ではあるのですが糸が少しずつ動き始めました。
「おお、大丈夫そうだわっ、ゆっくりな!」
「あいあいさあ!」
で、ゆっくりゆっくりリールを撒いていますと、 S君 が、
「なにあれっ!」
指さしているのは水中にわずかに見える糸。
「糸。」
「違う、その先!」
「は? なになに?」
目を凝らしてよーく覗き込みますと・・・糸の先の方で何かが回っています。
糸を中心として、お星様の様な形をしたモノがくるくる。
「なんじゃこりゃあ!」
風車的なゴミを引っかけてしまったのか。
慎重に慎重に・・・ゆっくりリールを巻き上げます・・・・
だんだんと水面に近づいてくるにつれ形がはっきりとしてきます。
やはり回っています。
くるくる。
で、なんか星の周りに、さらにヒラヒラしたモノが見えてきて。
気持ち悪いし興味津々だし。
全く見当がつかない。
とにかくそのままつり上げることにしました。
その、得体の知れないモノが水面上に姿を現したとき・・・その化け物が何であるかはっきりと認識しました。
私たちのような素人でも分かる正式名称。
たこ。
めっちゃでっかい 蛸。
・・・
頭(と思しき部分。本来は腹だそうな。)に針が引っかかってて、もがいたタコ君、何とか逃げようとして必死に釣り糸を昇ろうとしている。
それが引き上げられるもんだからくるくる風車みたいになってて。
そんな釣られ方・・親が泣くわ。
なんで?
エサもつけてなくて、何なら釣る意志が全くないのに・・・なんで?
ものすごい吸盤の強さで、引きはがすのに苦労しましたが、
「どんなもんじゃい!」
と二人で勝ちどきをあげて持ち帰りました。
食べて。
この、哀れなほど、多分その瞬間世界中のタコの中で一番ついていなかったであろうタコ君は私たちの胃の中に消えていったのでした。
釣り? 簡単簡単!
無欲でいればいいのよ。
釣ろうと思わなければ向こうからやってくるって・・・そんなもんじゃねーだろう的なお話。