・・・されど役者的妹尾blog

太く拡げよう僕の細道   since.2006.4.14
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瀬尾さんのこと




瀬尾脩(せのおすすむ)さん、カメラマン。

ウィキには(おさむ)と表記されていますが、これで<すすむ>と読みます。

享年83歳。



お通夜、東映撮影所からロケバスが2台出ました。

人柄が偲ばれます。

私もそれに乗って同行したかったのですが仕事のために行くことが出来ず、告別式に参列させて頂きました。

早朝、渋滞を避けて車を茨城県つくば市に走らせます。

運転しながら、瀬尾さんのしゃがれた叱り言葉が聞こえてきましす。





今回は瀬尾さんとのことをメタルダー撮影当時を振り返って書いてみたいと思います。

たくさんありすぎるのですが、まず、番組オープニングで使っている日本刀。

鞘から抜いて八相に構えるシーン…あの日本刀はホンモノです。

瀬尾さんの私物。

剣道の達人で、子供たちはもちろん県警で指導されていたこともあると聞いています。

あの当時、ちょっと前まで現役の力士、花嵐さんが出演されていましたが、腕相撲やっても瀬尾さんは楽勝で勝ってましたもの。

おっそろしいおじさんです。

私は、撮影中には瀬尾さんの家にほぼ毎日行ってお酒を飲ませてもらっていたのですが、飲んで気分が良くなると日本刀を見せてくれました。

もちろんちゃんと許可を得て数本持ってらしたのですが、瀬尾さんが座ったままで刀を振ると、

「ひゅーーーん、ひゅーん…。」

って音が出ます。

私が力任せに振り回しても全く音は出ません。

本当に軽く頭上で回しているだけなのに、笛のような美しい音が出ます。

達人の域。

で、


「小太郎、くわえろ!」


って。

たばこです。


「いいかー、怖がって動くなよ、じっとしてろい!」


って。

ひゅん!って音がすると、たばこが切れてます。

おっそろしい芸でした…。

小太郎…とは、撮影当時の私の呼び名です。

全スタッフが私のことを<小太郎>と呼んでました。




「こらー、妹尾、何やってんだ! そんなことも分からねえのか、馬鹿野郎!」



って、撮影開始直後は叱られていましたが、監督や他のスタッフさんが、



「カメラマンの瀬尾さんと同じ名前って怒りにくい。なんかやりにくいなー。」



的な意見が殺到しまして。

そうしましたら瀬尾さんが、


「平家物語の武将に妹尾太郎兼康がいるだろう。そのこどもは妹尾小太郎だからコタロウでどうだ。」



鶴の一声。

私、小太郎です。

(因みに兼康は大した武将だったようで、
「あっぱれ剛の者かな。是をこそ一人當千(とうぜん)の兵(つわもの)ともいふべけれ」
と源義仲に言わしめたといいます。)


私、瀬尾さんの家でお風呂に入れてもらったり酒を飲ませて頂いてますと、よくスタッフさんや監督さんたちが訪れます。


「お疲れ様ですー!座ってくださーい。」


ってい言ながらグラスやおつまみを出す役目。

本当に瀬尾さんの家のお手伝いさんみたいでした。



「小太郎、字を書いてみろ!」


書きます。


「上手くなくていいんだ。自分だけの字を書けよ。小太郎の字の良いところは伸びやかさだ。そのまま大らかでいろ。」


褒められているのですが、水戸弁でまくし立てられるので叱られているみたいです。



「小太郎、なんだそのズボンは!お前な、新人でも主役なんだぞ。穴の空いたズボンなんかはくんじゃないよ。休みの日だろうが仕事の日だろうがきちんとしろ、このオタンコナス!」


「新聞の番組欄を見てみろ。番組が大体400ほどだ。その中の一つを主演で飾るって言う自覚を持て。そんな確率は東大で一等賞とるより難しいんだぞ、アンポンタン!」



告別式に、高倉健さんからの供花が飾られていました。

高倉健さんのお話もよく聞かせて頂きました。



「おい、この馬鹿たれ。何だ、その表現は。できねえんなら荷物まとめてとっとと岡山に帰っちまえ。付き合ってられねーよ、スカタン!」


「だから、違うって言ってんだろ。何べん言やあわかるんだ。そんなの撮れねえんだよ!スットコドッコイ!」



もうめちゃくちゃ言われます。

どうしても下手くそで、対応出来ない私は悔しくて悔しくて泣いてしまったことがあります。

カメラ前で最悪です。

バレるのがイヤで下を向いてごまかしていましたら、


「そうだ、小太郎。その背中だよ。その芝居だ。高倉健もな、そうやって覚えていったんだよ!よっしゃ、回すぞ!」



風邪をこじらしてしまい、寝込んでいたときは瀬尾さんが家まで見舞いに来てくれました。


「小太郎、こりゃ部屋が汚すぎるぞ。これじゃ治るもんも治らねーよ。」


って言いながらかたづけてくれて。


「早く治せよ。小太郎がいねえと酒が楽しくねえ。しっかりしろい。」


******************************


「役者はな、しっかりと矜持をもって、美しく立ってろ。どーんと構えて男らしくしてろ。礼儀を忘れるな。」



飲んでるときも撮影しているときもずーっと叱ってくれました。

そして、それらの言葉は…私がこの世界で生きていく覚悟を与えてくれました。

瀬尾さん


家族でも親族でもありませんが、喪主のご長男が私のことをよく覚えていてくださり、


「遠いところよく来てくれたね。父は妹尾君のことが大好きだったよ。最後のお別れだからお花を棺桶に入れてあげてくれる?こんこんって釘うちもしてあげて。」


って言ってくれました。

ご病気のため少し痩せられていましたが、棺桶の中を白い花で一杯に埋めました。

有難うございます…を何度も何度も言いました。

ご親族の方の後、最後にコンコンって棺に釘を打ちました。

溢れる涙を止めることが出来ませんでした。

上を見上げて、きっとすぐ近くで皆を見ているだろう瀬尾さんが、


「小太郎、めそめそすんじゃねえ、このオタンコナス!」


って言ってる気がしました。

たくさんたくさん叱ってくれて、本当に有難うございました。

ゆっくり、安らかにお眠りください。

私もまだまだ頑張ります!




合掌…。







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2 Comments

コレダ☆GO says..."合掌…"
一声一言がみにしみるような思いがします。

良き師だったのだと感じます。

あの世に行ってもお元気でありますように…(合掌)
2014.05.20 23:44 | URL | #l.HremGI [edit]
へから夫人 says...""
愛を感じます。

せのおさん同士の相思相愛だったんですね。
2014.05.20 16:54 | URL | #- [edit]

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